台風による強風は、物を吹き飛ばす以外にも様々な被害をもたらします。
塩風害もその一つですね。最近では、単に「塩害」と呼ばれることの方が多いようです。
では、台風による塩風害とはどのようなものなのでしょう。
ここでは、塩風害の具体的な被害やメカニズムなどを紹介していきます。
台風による塩風害とは?
塩風害は、台風などの強風で海水の塩分が運ばれることによりもたらされる被害の総称です。
主に沿岸部で被害が大きいですが、風の強さによっては内陸部に被害が及ぶこともあります。
特に内陸部では、塩風害に対して対策がおろそかなことが多いです。
そのため、いざというときに対策が遅れてしまい、被害が拡大してしまうことも多々あります。
塩風害によりもたらされる被害
塩分による被害として真っ先に思いつくのは錆びですが、他にも思っているより大きな被害を各地にもたらします。
ここからは、塩風害が引き起こす、具体的な被害を見ていきましょう。
電線などのショート
電線に塩分が付着すると、ショートして火花が発生することがあります。
この火花が風に飛ばされると、火災に発展するおそれがあり危険です。
それから、電線がショートすると、付近が停電になる恐れもあります。
特に電線のショートは、塩分が析出した後に起こることもあるので、台風通過後に発生することもあります。
天候が落ち着いたからと言って油断はできません。
農作物への影響
植物にとって塩分は天敵です。
わずかな量でも、葉や枝を枯らす原因となってしまいます。
特に葉は、塩分により水分を奪われやすく、深刻なダメージを受けやすいです。
農作物を育てる畑に影響が出ると、それまで育ててきた野菜が全てダメになる恐れがあります。
農家さんの生活を、脅かす危険もあるのですね。
さらに、塩風害は広範囲に広がるので、野菜の価格の高騰に繋がりかねません。
それから、土壌の塩分濃度が高まることも、植物にとってはよくありません。
浸透圧の関係で、水を吸収しにくくなってしまうので、発育に影響が出てしまいます。
車や建物のサビ
金属にとっても塩分は天敵です。ちょっと塩が付いただけでも、放っておくとすぐに錆びてしまいます。
つまり、車や家屋の金属部に塩分が付着すると、錆びてしまう原因になるということです。
特に車は、露出するほとんどの部分が金属です。
塗装などで錆びないようにはできていますが、油断していると思わぬ箇所が錆びて故障を引き起こすことになります。
それから、家屋の壁など金属ではない部分でも、塗装などに悪影響を及ぼす場合があります。
コンクリートの内部の鉄筋が腐食する原因ともなるので、金属以外の部分にも油断ができません。
なぜ塩風害が起こるのか?
塩風害は、台風のような強い風が海水を巻き上げることで発生します。強風は、思いも寄らないほど遠くに塩分を運ぶこともあるので、海沿い以外の地域にも被害が及ぶことがあります。
特に、大潮の満潮時のように潮位が高い時間帯は、巻き上げられる海水が多くなりがちです。そのため、満潮と台風の上陸が重なるような場合は、最大限の注意が必要になります。
通常の台風は強い雨も伴うので、塩分がある程度洗い流されそれほど深刻な塩風害は発生しないことが多いです。
しかし、大雨を伴わない風台風の場合は、塩分が流されないため、塩風害の被害が大きくなってしまいます。
塩風害が起こった実際の事例
2018年に発生した台風24号は、日本各地に多くの塩風害をもたらしました。
東京都成田空港を結ぶ京成線では、送電線から出火し長時間にわたる運休が発生。約50万人に影響が出たとされています。
また、千葉県御宿町では約1700戸が一時停電。
停電発生が夜間であったため、住民の生活にも支障をきたしてしまいました。
それから、各地で植物の葉が枯れる影響も出ています。
東京をはじめ、神奈川、静岡、千葉、茨城などかなり広い範囲の植物が、塩風害によりやられてしまったのです。
塩風害から身を守るためには?
塩風害で、まず気をつけなければならないことが電線のショートです。
思いも寄らぬところから火花が落ちてきて、衣服に燃え移るなんてことになりかねません。
電線のショートは、台風通過後に発生する場合もあるので油断できません。
電線からジリジリと変な音が聞こえるようなら、速やかにその場から離れるようにしましょう。
後は、台風通過後に車や家屋をしっかりと洗うようにします。
塩は水で簡単に落ちるので、きちんと洗っておけばさびを防ぐことは難しくありません。
これは、植物も同様です。草木に付いた塩分を直ちに洗い流すことで、葉が枯れる被害を最小限に抑えることができるでしょう。
台風時は塩風害に気を付けよう
台風レベルの強風は、塩風害とは無縁の場所まで被害を拡大させる恐れがあります。
よっぽど内陸部でない限り、もしもに備えて知識だけでも持っておくようにしてください。
知識さえ持っていれば、洗い流すなど対策は簡単ですからね。