寒くなり始める秋の終りや、冬の寒さが残る春の初めは、朝に霜を見かけることが多くなります。
道端の雑草や地面が、雪のような氷に覆われているのを見たことがあると思います。
見た目はとてもきれいですが、霜は人間の生活に悪影響を及ぼすことがあります。
それが「霜害」です。ここでは、霜害の基本的な知識を紹介していこうと思います。
霜害とは?
霜害とは、霜が農作物の葉や茎に降りることによって起こる被害のことを指します。
霜は氷の結晶なので、当然0℃を下回ります。
つまり、霜が植物に降りているという状態は、直接0℃以下に冷却しているのと同じことなのです。
植物は、-2℃以下に冷やされると生育が遅れたり、枯れてしまったりします。
これは、植物の80%以上が水でできているためです。
特に、お茶、桑、ジャガイモ、タバコなどは、寒さに弱く大きな被害を受けやすいです。
また、秋に突発的に起こる早霜や晩春に起こる晩霜は、発生の予測が難しく被害が大きくなる傾向にあります。
霜害は、日本以外の地域でも発生しています。
たとえばブラジルでは、春先の霜によりコーヒーがダメージを負うことが少なくありません。
霜害で収穫量が激減すると、コーヒーの取引価格が急騰することになります。
また、フランスでもブドウが霜害の被害に合うことがあります。
ブドウが被害に合うと、ワインの品質や価格に大きく影響してしまうのです。
霜が降りるメカニズム
霜は、葉などの表面が0℃以下になったとき、空気中の水蒸気が直接凍ることで発生します。
このような、液体の水を介さず水蒸気が直接凍ることを昇華現象といいます。
水蒸気が上空で直接凍り、振ってくるのが雪です。
そのため、発生のメカニズムとしては、雪も霜も同じということになります。
特に、快晴の日の翌日は、放射冷却により地表付近が冷え込むので霜が降りやすくなります。
また、湿度が高い日も、霜の元となる水蒸気が多い状態なので霜が降りやすくなります。
霜害への対策は?
霜害は、事前に対策することで未然に防ぐことができます。
ここからは、霜害を防ぐ方法をいくつか紹介していきましょう。
被覆法
藁やビニールで、作物を直接ガードする方法が被覆法です。
霜は、覆った藁やビニールに降りるため、作物は霜害を逃れることができます。
特に、背の低い作物に有効です。一方、お茶など背の高い作物は、覆うことが難しいので適していません。
加熱法
加熱法は、薪や重油を燃やして直接農作物を温める方法です。
霜が降りる前に点火する必要があるので、気温と湿度の見極めが重要です。
作物に被害が出る危険温度は-2℃のため、0℃になるまでには点火するようにしたいです。
氷結法
氷結法は、水が氷に凍結する際に放出する熱を利用して、氷点下にならないようにすることで霜害を防ぐ方法です。
霜が降りる気温で水をまくと、凍って氷ができます。
凍った瞬間は熱が放出されるため、しばらくの間は氷の温度が0℃に保持されます。
その間に新しい水を供給すれば、常に温度を0℃近くに保てるという原理です。
作物に被害が出る危険温度は-2℃なので、0℃を維持できれば問題ないということになります。
送風法
放射冷却による冷え込みは、地表付近が最も激しいです。
地表から離れた上部の空気は、3℃以上も暖かかったりします。
そこで、温かい上の空気を地表に送風し、温度の低下を防ぐ方法が送風法です。
茶畑などで、背の高い扇風機が取り付けられているのを見たことがある方もいるかもしれませんね。
あれは、霜害対策のために設置されています。
霜害に気を付けよう
大規模な霜害が発生してしまうと、野菜や果物の供給量が激減するおそれがあります。
そうなると、価格が高騰してなかなか手が出せなくなってしまうのです。
農業に携わる方が頑張って霜と闘ってくれるおかげで、リーズナブルな価格で野菜を食べることができるのです。
農家の方に感謝して、野菜や果物も食べなくてはいけませんね。